------ 通訳と英会話は似て非なるものという感じもしますが、参考になる部分も
あると思うので聞きたいのですが、日本語から英語に変換する場合、どの
ような過程なのでしょうか?
yumi そうですね。通訳の場合、他人の言葉を英語にするわけですから、日本語
の能力も問われる点がいわゆる英会話と違う点なのですが、私なりにまと
めてみます。
日本語は情緒的な言葉なので、常にあいまいさが伴う感じがします。それ
に比べると英語は論理的なので、あいまいさを排除しなければなりません。
ですから、まず、その人の日本語を聞いて、それを論理的に組みなおす必
要がある場合もあります。
つまり、日本語にとらわれずに、言いたい要点をまとめなければなりませ
ん。その時にパターンとしては、
1、簡単な言い回しにする
2、同じニュアンスの構文に置き換える
3、主語を入れ替えてみる
4、幾つかの文章に分解する
こんな感じでしょうか。
------ なるほど。もう一度順番に聞いてみたいと思います。ではまず、(1)の
「簡単な言い回しにする」とは?
yumi これもいろいろなパターンがあると思うのですが、例えば「出処進退を明
らかにする」は「方針を決断する」として[decide on my course of
action]とその意味から考えて平易な言い回しに置き換えたりします。
また、名詞を使って簡略化することもあります。例えば、「組織運営に長
けている」なら[He is a good organizer.]とか[He has organizing
ability.]とするわけです。
------ 「包容力がある」が[an understanding person=理解のある人]になった
りする場合ですね。では(2)の「同じニュアンスの構文」に置き換える
というのは?
yumi 英語にも日本語と同じニュアンスの構文がありますのでそれを借用します。
例えば「さえすればいい」は[All you have to do is----]でいですし、
とか、「何があっても」はご存知の[No matter what happens.]ですね。
------ この場合は、まず構文を頭に入れて置かなければなりませんね。では次の
「主語を入れ替える」というのは?
yumi これは物を主語にしたり、受身にしたりする場合です。
定番なのが、仮主語をたてて[It is ---to---]などとする場合ですね。
あと「どうして」の場合に[What makes you ----?]を使い、「何があな
たそうさせたのか?」と言うのもお馴染みですね。
その他、「身体が弱くては決して満足のいく仕事を達成できない」なら、
[A weak body will never be able to accomplish a satisfactory
task.]で「弱い体は達成できない」となったりします。
----- 「どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」は[What makes you look
so sad?]となるわけですね。
英語は結構、人間以外の物が主語になる場合が多いですね。
「一喜一憂する」が[My feelings swing back and forth between
joy and despair.]と「感情が揺れ動く」となったりしますね。
では次の「いくつかの文章に分解する」というのは?
yumi 日本語で「まるで夢のようです」と言えば、喜びの表現だとすぐわかり
ますが、これを英語にする場合「夢のよう」と「嬉しい」という二つの
要素に分けて説明した方が相手によく理解してもらえる場合があります。
また、傾向として、日本語だと理由がきちんと説明されずに済む場合が
あるのですが、英語にする時には論理的に「こうだから、こうです」と
言わなければならない場合もあります。
ですから、場合によっては英語の訳の方が長くなります。
------ 長い日本語が英語になると短くなる場合もあれば、逆に短い日本が長い
英語になる場合もあるのですね。
yumi そうですね。日本語の婉曲の表現をそのまま訳すと何が言いたいのかわ
からない場合があります。私自身が理解できなくて、聞き直す場合もあ
りますから(笑)。そういう時は、思い切ってポイントを中心に伝える
時もあります。でも、あまり短くすると、正確に訳していないと誤解さ
れる場合があるので困りますが。
------ なるほど、通訳って大変ですね。
このようなパターンで英訳するという手順は英会話にも役にたちますね。
------ 前回、yumiさんが日本語を英語に訳す場合のパターンを幾つか聞きました
が、もう少し詳しく聞きたいという声がありましたので、よろしくお願い
します。
まず、「簡単な言い回しにする」ということについてですが・・・
yumi 日本語もそうですが、ひとつのことを表現するのに色々な言い方がありま
す。ですから、まずはその言いたいことの気持ちから考えます。
たとえば
「彼の本音がわからない」=「何をしたいのか、欲しいのかわからない」
=I cannot understand what he really intends(wants).
また、「本音」を言い換えると=本当の意図= true(real) intention
=I cannot understand his true(real) intention.
------ 「本音と建前が違う」というのはどうなりますか?
yumi この場合の本音はちょっと意味が違うと思うのですが、英語では「主義と
実践は違う」という言い方が一番近いと思います。
=Principle and practice are different.
------ なるほど、場合によっては言い方が変わるんですね。
それではもう少し例を。「大げさに考えすぎだよ」の場合は?
yumi この場合は「大げさ」にとらわれると難しくなりますね。
言い換えると、「深刻にとりすぎている」で
=You take it too seriously.
それか「ことを大きくし過ぎている」と考えて
=You're making too much of the matter.
------ 簡単なようで難しいですね。何かコツはありますか?
yumi 日ごろから、ひとつの言い方を言い換えるようにするといいと思います。
その時に、前にお話しした通り、名詞を使う練習もしたほうがいいですね。
簡単な例で言うと・・・
「記憶力が良い」は=remember well でもよいですが、名詞を使うと簡単
です。
=have a good memory
ついでに「記憶力が悪い」=have a bad(poor) memory
------ 「彼の記憶は正確である」は= He has an exact memory. ですね。
それでは「年のせいで記憶力が減退した」は?
yumi 「年のせい」をどうするかですね。
年齢と共に=with age
高齢のために=because of old age
年をとるにつれ=as one grows older
次に「記憶力が減退した」は
One's memory is failing=衰えている
One's memory weakens=弱っている
One's memory declines=下降している
主語を変えると
Old age has dimmed my memory.
言い方を変えて「忘れやすくなった」
I have become very forgetful with age.
------ ついでに「年には勝てない」は?
yumi これは決り文句があります。
Age will tell.
------ なるほど。やはり多くの英語に接しないと駄目ですね。
yumi そうですね。ポイントは、言い換える練習をすること、語彙を増やすこと、
より多くの英文に接することですね。
語彙を増やせば、簡単に言えることもあります。
例えば「健忘症」は=amnesia を知っていれば簡単ですね。
------ 「〜のことを考えると」なんかも、<Considering that〜>を知っていれば
簡単ですね。
------ yumiさんが日本語を英語に訳す場合のパターンについて引き続いて聞いて
みたいと思います。
前回、「言い換え」について少し触れましたが、どう言い換えのパターン
がありますか?
yumi よく使われるのが「否定」と「肯定」の言い換えですね。
たとえば、「見たことがない」は「はじめて見た」に。
I have never seen such a picture as this.
=This is the first time I have ever seen a picture like this.
「一番すごい」は「誰もかなわない」に
He is the best guitar player.
=Nobody can beat him at playing the guitar.
<nobody>を使うと色々言い換えができるので便利です。
There is no such person in this family.(そんな名前の人はいません)
=We have nobody of that name in our family.
「疑問」からの言い換えもあります。
Who would run such a risk?(誰がそんな危ない橋を渡るか?)
=Nobody would run such a risk.
面白いのは「誰も知らない」は「神のみぞ知る」に言い換えれます。
Nobody knows what will happen.
=God only knows what will happen.
------ 主語を換える方法はどうですか?
yumi 英語では、人以外のものが主語になることが多いです。
この傾向は原因などの因果関係を述べる場合に多く見られ、何かが「引き
起こす」という表現になり、bring, led, cause, make などが使われます。
「不注意だった」は「不注意が招いた」
His carelessness led to serious trouble.
「彼が怠慢だったので」は「彼の怠慢が原因となった」
His neglect of duty caused a disastrous accident.
「酒の飲みすぎでだめになった」は「酒がもとで」
Drink led to his downfall.
「彼の言動が先生を怒らせた」
His behavior made the teacher mad.
「どういう風の吹き回し」=「何がそうさせたか?」となります。
What made you bring a present?
------ なるほど。「影響を与える」場合もこの因果関係にあてはまりますね。
Parental discord has a bad effect on children.
(夫婦の意見の不一致は子供に悪い影響を与える)
yumi そうですね。
「そのことを思いすと涙が出る」などもそうです。
The thought brings tears to my eyes.
これらの表現は日本語の「招く」「引き金になる」「導火線になる」で
表現できるものに応用できます。
あとはこの他に「何かが知らせる」場合も物が主語になりますね。
「新聞が報じる」場合
The newspapers say that a big typhoon will strike Kyushu tomorrow.
意外と日本人が使えないのが<read>を使う場合で、掲示などが知らせる
場合です。
「看板」の場合 The sign reads "One Way."
「追記」にある場合も The postscript reads -----.
「温度計」も The thermometer reads 20 degrees.
------ なるほど、こういうパターンを覚えておけばいいんですね。
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